給与計算アウトソースのメリットとは?計算業務を外注化で課題を解決!

管理業務としては比較的専門性の高い「給与計算」は、人材確保とコストが課題になりがちです。社の成長スピードやベンチャー挑戦の意欲しだいでは、外部委託も積極的に検討すべきでしょう。

本記事では、具体的にどのような業務が「給与計算アウトソース」(給与計算アウトソーシングとも)の対象になるのか解説した上で、活用企業視点でのメリットを解説します。

 

目次

1.給与計算アウトソースとは
  1-1.手取り額の計算(給与・賞与)
  1-2.年末調整
  1-3.住民税の徴収
2.給与計算アウトソースのメリット
  2-1.管理業務にかかるコストを削減できる
  2-2.計算ミスを減らすことにつながる
  2-3.「業務の属人化」によるリスクを回避できる
3.給与計算業務の外注化を検討すべきケース
4.給与計算アウトソースでよくある疑問
  4-1.雇用形態が入り混じっていても外注化できる?
  4-2.給与計算の外注先を士業法人にするメリットは?
5.まとめ

1.給与計算アウトソースとは

そもそも給与計算アウトソースとは、企業全体あるいは特定の社内担当者の負荷となっている「給与や役員報酬の計算」を外部委託することを指します。
委託契約後は就業規則とタイムカードを提出するだけで、下記のように、社会保険や源泉徴収等の計算も一括で任せられます。

※手取り額計算以外の業務の一部は、社労士・税理士の「独占業務」とされており、対象の士業が在籍する業者のみ受託可能です。詳細は「士業に委託するメリット」として本記事の最後で解説します。

1-1.手取り額の計算(給与・賞与)

委託可能業務の主軸になるのは、従業員や役員の手取り額を計算する業務です。
本業務は「総支給額から源泉徴収税額と保険料負担額を差し引くだけの作業」と簡単に言い表せますが、実務では労働関連法規・会社の就業規則・個別の従業員の状況(労働条件や扶養親族数など)を丁寧に確認しなければなりません。

【一例】計算が複雑になるポイント

割増賃金の計算
割増賃金の計算では、就業規則だけでなく労働基準法も参照しなければなりません。休日・深夜の労働が重なるほど計算が複雑化し、さらに各種手当も割増賃金の算出の基礎に入るのか調べる必要があります。

不就労控除の計算
不就労控除には複数の計算方法があります。また、就業規則にないにもかかわらず「思い込み」で無給扱いにすると労働問題に発展する恐れがあるため、慎重に進めなければなりません。

賞与に対する源泉徴収税額の計算
税法上、賞与と月次給与では源泉徴収税額の計算方法が異なります。総支給額や前月の給与支払い状況によっては、さらに別の計算方法を用いなければなりません。

「ミスなく手取り額を計算できるかどうか」は従業員との信頼関係に直結します。また、税額・保険料率等・その他給与計算に関連する法令は頻繁に改正されるため、担当者は常に最新情報を把握しておかなければなりません。

以上の点を踏まえ、給与計算業務を受託するのは、バックオフィス業務に特化してスキルを集積している業者か、もしくは士業在籍業者(あるいは士業法人)であるのが一般的です。

1-2.年末調整

源泉徴収税額と実際の課税額との差額を調整する「年末調整」も、手取り額計算に付随する委託可能な業務のひとつです。調整を行う際は、従業員から情報収集し、課税給与所得額等を計算した後、市区町村には「給与支払報告書」・税務署には「源泉徴収票」とのように作成した書類の提出が必要です。

また、年末調整に伴って従業員からの問い合わせ(医療費控除等)にも対応しなければなりません。

給与計算アウトソースを利用することで、従業員との対応業務のみ自社に残し、残りの年末調整業務は専門知識のある受託業者に任せられます。

1-3.住民税の徴収

住民税を徴収し納付する手続き(特別徴収)は基本的に企業の義務であり、東京を中心に強化が進んでいます。特別徴収を行おうとする際は、従業員が居住する自治体から住民税課税通知書が送付されてくる毎年5月頃に業務が増え、担当者のキャパシティを圧迫することになります。

給与計算に付随して、本業務も外部委託可能です。

2.給与計算アウトソースのメリット

給与計算業務にかかる人件費と労力は、企業規模と共に増大します。コア業務に人材を集めて成長しようとする企業にとっては、特に無視できない問題でしょう。加えて、専門知識を要する業務の性質上、特定の人員に作業が偏りがちであることも見逃せません。

以上のような給与計算業務の問題点は、外注化によって下記のように解決できます。

2-1.管理業務にかかるコストを削減できる

給与計算アウトソースの最大のメリットは、計算にかかる管理業務で必要な不定かつ高額なコスト(人件費・システム導入費・保守費など)を削減できる点です。

従来通り社内でエクセル等を使った業務を続ければ、担当者が本来注力すべき業務がおろそかになり、人的資源管理の効率化には到底及びません。

初期費用を恐れず給与計算システム(ソフト)を導入しても、手入力対応の人件費をゼロにすることは出来ず、さらに法改正や障害に対応するため保守費もかかります。

以上のようなコスト発生の問題は、専門知識があり業務品質と効率が担保されている業者に外部委託することで免れられます。

2-2.計算ミスを減らすことにつながる

給与計算アウトソースの第二のメリットは、計算ミスとそこから生じるコスト(差額調整や問い合わせ対応など)を減らすことができる点です。

給与計算アウトソースでは、計算を専業とする人員や、雇用契約に関する基本法令と最新の改正内容に精通した「社会保険労務士」や「税理士」が受託します。したがって、税額・保険料率等、頻繁に発生する改正にも対応した給与計算が行えます。

2-3.「業務の属人化」によるリスクを回避できる

給与計算を社内で行っている企業では、その専門性の高さゆえに「特定の人物に業務が集中している傾向」(=属人化)があります。属人化による以下のような懸念は、給与計算に限らず、どの業務でも共通して言えることです。

【業務属人化のリスク】

  • 知識不足やチェック機能がなく計算ミスが発生する
  • 情報漏洩が発生する
  • 業務効率が低下する(担当者が改善アクションをしない)
  • 万一担当者が退職ないし休職で抜けてしまうと、その業務が完全に停止してしまう

以上のような属人化による悪影響も、契約関係を通じて達成意識・コンプライアンス遵守・プライバシーポリシーを確認した業者に委託することで、容易に解消できます。

3.給与計算業務の外注化を検討すべきケース

先述で解説したメリットとデメリットを総括すると、給与計算業務の外注化を検討すべき状況として、下記3つの事例が挙げられます。

【ケース1】特定の社内メンバーに計算業務が集中し、業務負担が大きくなっている。

頻繁に起こる退職や配置換えの希望は、過負荷のサインです。
業務属人化が発端となって企業が抱えることになるリスクも踏まえ、外注化を視野にいれましょう。

【ケース2】専門知識を有するメンバーがいない(退職してしまった)

業務の性質上、採用や育成にあたっては相当のコストがかかります。費用対効果について人件費・システム導入費などを比較考量し、外注化を検討すべき段階です。

【ケース3】コア業務に人的リソースを集中させたい

頻繁に発生する法・税制改正に対応し手間がかかる給与計算業務に割かれている リソースを積極的に開放する必要があります。給与計算業務に関しては、他の手段(システム導入や効率化アクションなど)に比べ、外注化がリソース開放の近道になります。

4.給与計算アウトソースでよくある疑問

給与計算のアウトソースを担う業者は日々増加しており、サービス内容も千差万別です。

業務責任者、あるいは経営者は「料金」「外注化できる業務の範囲」「セキュリティ面」の3点を比較し、自社のニーズに合う業者を選択しなければなりません。

下記では、給与計算業務の外注化に関するよくある疑問に回答します。

4-1.雇用形態が入り混じっていても外注化できる?

結論として、正規雇用と非正規雇用が混交している企業でも、給与計算業務の一括アウトソースが可能です。

雇用形態の多様化に応じて就業規則が複数存在する状態は、給与計算業務のミスの元になります。以上の点を踏まえれば、むしろ外部委託により適しているケースと言えます。

4-2.給与計算の外注先を士業法人にするメリットは?

士業法人(社会保険労務士や税理士)に給与計算を委託するメリットは2つ挙げられます。
メリットの1つは、手取り額計算に付随する「税や保険に関する手続き」まで外注化できる点です。ただし、独占業務(有資格者のみ携われる業務)の定めがあるため、士業ごとに委託できる業務が異なります。

【給与計算に関連して外注化できる業務】

社労士:賃金台帳の作成、労働者名簿の作成、労働社会保険の申請手続き
税理士:源泉徴収票の作成(年末調整の際に必要)

士業に委託するもう1つのメリットは、アウトソース以外にも労務等のコンサルタントを依頼できる点です。

下記では、士業ごとの詳細(委託可能範囲やコンサルタントの特徴など)について紹介します。

 

4-2-1.社労士に給与計算業務を委託するメリット

給与計算業務を社労士に委託するメリットとして、給与計算はもとより社会保険や労働保険等の手続きも一括して委託ができるため、給与計算と手続きを連携してスムーズに行うことができます。社会保険や労働保険の影響により給与額が変わることも多々あるのでまとめて委託できる社労士は安心できる存在です。

なお、社労士は「労働問題の解決」や「労務コンサルタント」も得意とします。
給与計算に欠かせない資料(タイムカードや就業規則など)から、その企業が抱える労務リスクを診断した上で、就業規則の見直しやハラスメント防止策まで提案できるのです。

 

4-2-2.税関係は「賃金台帳の作成」を委託できる

税務書類の作成は社労士の業務範囲外となるため、年末調整の手続きそのものは委託できません。一方で、源泉徴収簿(年末調整に必要な情報をまとめた帳簿)と兼用できる「賃金台帳」の作成に関しては、社労士で対応できます。

なお、賃金台帳の作成に関連して、助成金の申請についても相談や手続きの委託が可能です。

 

4-2-3.税理士に給与計算業務を委託するメリット

税理士に給与計算を委託するメリットは、年末調整の手続き(源泉徴収票の作成等)に対応できる点です。先にも述べた通り、従業員数がごく少数であれば、他のアウトソース先に比べて格安で委託できる事例が多いのも特徴です。

ただし、給与計算特有の労働社会保険等の考慮を伴う性質上、税理士の本来の職務(記帳指導や経営相談など)からはやや外れます。

従業員数が数十名以上に達している例はもちろんのこと、計算に付随する業務を一括で任せたい場合、税理士と連携をとって業務範囲を補完し合っている社労士法人に委託相談すると良いでしょう。

5.まとめ

企業の成長に直接貢献しない「給与計算業務」は、一方で専門性が求められ、従業員との信頼関係にも関わるものです。効率化できないまま社内に残しておくと、コスト増大・品質低下・属人化リスクなどの様々な問題が生じさせかねません。

上記の問題は、計算業務を外注化(アウトソース)することで一挙に解消します。
「コア業務に集中したい」「人材が不足している」「教育する時間がなく業務効率が低下している」とお悩みの事業主は、是非ご相談ください。

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