パワハラ防止法がついに2022年4月から中小企業にも適用され、企業のハラスメント防止に対する姿勢が改めて問われています。一方でDX・リモートワークによる「テクハラ」「リモハラ」、多様な人材の活躍による「SOGIハラ」など新たなハラスメントの問題も生じてきておりハラスメント対策の重要性は、より一層増しています。
多様化するハラスメント
①在宅勤務の浸透がきっかけで生じた「リモハラ」
コロナの影響により定着した在宅勤務ですが、オンラインミーティングやチャットツールでのコミュニケーションといった労働環境の変化により生じてきたのが「リモートハラスメント」です。
具体的には
- オンラインミーティングの際のメイクや服装、部屋などのプライベート空間を監視
- オンラインにおけるカメラ(顔を出すこと)を強要
- チャットで叱責をする
などを指します。
チャットは端的な文字によるコミュニケーションとなるため、表情やトーン、空気感が伝わらず冷たい印象を与えてしまう、会話の微妙なニュアンスが伝わらないなど、行き違いが生じることも少なくありません。また受け手側が威圧的であると感じやすくなることもあるため、場合によっては電話でのフォローも大切です。
②多様な人々の活躍により職場でも生じてきた「SOGIハラ」
LGBTという呼称が定着しましたが、一方でSOGIという考え方が広まりつつあります。SOGI(ソジ)とはSexual Orientation(性的指向)とGender Identity(性自認)の頭文字をとった言葉です。従ってSOGIという言葉を用いることで性にまつわることは、すべての人に関係するということが分かります。
具体的には
- 心の性が一致しない人に戸籍上の性の服装を強要する
- セクシュアルマイノリティーの人に対しての差別的な言動
- カミングアウトしたことなどを本人の許可なく他人に言いふらす等のアウティング行為
などを指します。
③男性の育児参加を阻害する「パタハラ」
日本における男性の育児休業の取得は僅か12%(女性は81%)。取得期間については、男性社員の約7割が2週間未満と短期間の取得となっています。なぜ男性社員は育休取得に消極的なのでしょうか。内閣府の調査によると1か月以上の育児休業を取得しない理由には、33.8%の人が、「職場が男性の育休を認めない雰囲気である」と回答をしています。
グラフ:1か月以上の育児休業を取得しない理由
令和3年6月4日 内閣府 第3回新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査
パタハラとは、男性が育児参加を通じて自らの父性を発揮する権利や機会を、職場の上司や同僚などが侵害する行為を指します。父性を意味するPaternity(パタニティ)から、パタニティ・ハラスメントと呼ばれています。
例えば
- 「男性の育休は実績がないし、現実的には難しいのでは」
- 「奥さんに任せられないの?」
- 時短勤務をする社員に対して「重要な仕事は任せられない」
といった言動等が該当します。
厚生労働省の2020年の調査によると男性社員の4人に1人がパタハラを受けたと回答し、経験者の約4割が育休取得を諦めたとしています。
パタハラは改正育児介護休業法の施行のきっかけにも
このようなパタハラの問題もあり、男性の育休取得はなかなか進まなかったことから2022年4月より改正育児介護休業法が施行されることになりました。
従業員本人または配偶者が妊娠・出産した場合に、会社側から育児休業制度をきちんと説明し、取得の意思を確認することが義務付けられるため、企業の担当者はこれまで以上に育児休業制度やパタハラ防止について理解を深めることが求められます。
ハラスメントの防止には、ハラスメントを正しく知ることが必要
厚生労働省の調査によるとハラスメントを予防・解決をする上での課題として「ハラスメントかどうかの判断が難しい」との意見が約65%と最も多くを占めています。この結果からは「社員一人ひとりがハラスメントに関する知識を深めハラスメントを正しく理解していくこと」がハラスメント防止や課題解決のためにまず必要な行動であることが分かります。
グラフ:ハラスメントの予防・解決のための取組を進める上での課題(従業員規模別)
2020年10月 厚生労働省 職場のハラスメントに関する実態調査
テレワークや多様な人材の活躍などにより労働環境も日々変わりつつあります。これからはどこまでが許容され、どこからがハラスメントなのかその点を確認しながら自身の言動を見つめ直すことが求められます。そして多様化するハラスメントの事例や、ハラスメントが及ぼす影響などについて社員に定期的に研修等で啓発していくことも肝要です。
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