過労死の労災基準20年ぶりの見直し、範囲が拡大
- 2021年7月20日公開
厚生労働省は、過労死における労災認定基準を20年ぶりに見直すことを決定しました。
現在の基準では、これまでは一定の残業時間の長さが過労死ラインに達しているかどうかを判断の材料として重視していましたが、今回の見直しにより、一定の残業時間数を超えなくとも、それに近い実態があり不規則な労働時間等が認められれば労災認定がされることになりました。
過労死における労災認定基準とは
過労死の対象となる疾病には、脳梗塞・脳内出血・心筋梗塞・心停止などがあります。脳・心臓疾患の発症前1か月間におおむね100時間、または発症前2~6か月間にわたって1か月平均80時間を超える残業をしている場合、過労死ラインを超える過重労働と評価され、労災認定の基準とされていました。
しかし、今回の見直しにより、残業時間の長さが過労死ラインに達しない場合でもそれに近い残業があり、負荷が大きい不規則勤務をしていると認められた場合には、労災が認定されることになります。
長時間労働による脳・心臓疾患が労災認定される基準(過労死ライン) | |
脳・心臓疾患の発症前の時期 | 月の残業時間数 |
1か月 | 100時間超 |
2~6か月 | 平均80時間超 |
今回の見直し
【残業時間が過労死ラインに達しなくても不規則勤務などの負荷要因があれば認定対象】
不規則な勤務として挙げられているのは、拘束時間の長い勤務、休日がない連続勤務、終業と次の日の始業までの時間(勤務間インターバル)が短い勤務などです。
前回の改正の際にも、労災の認定には残業時間以外の負荷要因も評価するとしていますが、実際には残業時間が重視される傾向があり、ここ数年、残業時間が過労死ラインを下回っているケースの認定は一割程度となっています。
まだまだ多い日本の労働時間
日本における全就業者(短時間労働者を含む)の年間平均労働時間は、G7の中でも4番目に高く、正規労働者のみを対象とした年間平均労働時間においては、G7のトップに躍り出る実態となっています。
全就業者の年間平均労働時間数と短時間労働者の割合
独立行政法人 労働政策研究・研修機構 データブック国際労働比較2019
2018年の全就業者の年間平均労働時間
経団連の2019年労働時間等実態調査 2018年の正社員の年間平均労働時間
日本クレアス改編
国も長時間労働を何とか抑止しようと、2023年4月から中小企業においても月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を25%から50%に引上げられます。よって企業としてもあらためて労働時間の削減を進めることが求められてきます。
さらに今回の見直しにより、残業時間が過労死ラインに達しない場合でも労災が認定される可能性があることから、
- 拘束時間の長い勤務となっていないか。
- 休日がない連続勤務となっていないか。
- 終業と次の日の始業までの時間が十分とれているか。
このような観点からのチェックも必要となります。
あらためて貴社の労働時間管理の状況を確認してみましょう。
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