2016年から3年間を最大のチャレンジ期間としてニッポン一億総活躍プランで打ち出した「働き方改革」。
日本の生産性が低いのは、「格差問題」「働きすぎの問題」「非正規社員の増加問題」であるとし、政府は「働き方改革」のなかで「同一労働同一賃金」の実現を政策目標として掲げました。今後のタイムラインとしては、①労働契約法、②パートタイム労働法、③労働派遣法を一括改正し、平成31年から新制度をスタートする方針です。
正規、非正規間の処遇格差(国際比較)
日本においては、正社員と非正規社員の間には欧州諸国に比較して大きな処遇差があるとされ、正社員に対するパート労働者の賃金水準は、欧州では7割~8割程度であるのに対し、日本では6割弱とされています。
非正規社員の賃金水準が低いことは、女性活躍の阻害要因や少子化の要因とも言われており、働き方改革の中で10年かけて、EU諸国並みの8割水準に近づけたいというのが政府のねらいです。
昨年12月に公表されたガイドライン案。
基本給や賞与、各種手当など項目を細かく分類した上で具体的な例(問題となる例/問題とならない例)が示されました。しかし、定年再雇用後の扱いについては、先送りとし、現在争われている裁判の判断を参考にガイドラインの補強を検討すると言っています。つまり、ガイドライン案はまだ固まっていないため、政府の今後の検討が進んだ上で実務対応を考えるべきではないでしょうか。
諸外国との賃金水準比較
この格差の是正(70%~80%程度か)が目的(フルタイム=100)
- 日本 ・・・56.6
- イギリス ・・・71.4
- ドイツ ・・・79.3
- イタリア ・・・70.8
- フランス ・・・89.1
- オランダ ・・・78.8
- デンマーク・・・70.0
出典:労働政策研究・研修機構「データブック国際労務比較2016)
今、企業が認識すべきもの
ガイドライン案から読み取らなければならないものは、我が国における同一労働同一賃金の考え方は欧州の同一労働同一賃金の原則を正面から取り入れた制度ではないこと、そして賃金の決定基準、ルールの違いがあること自体否定するものではないことです。従って正規社員と非正規社員との処遇差において合理的な説明ができれば、その差が認められる考え方が採用されていることを理解することが肝要です。
ガイドライン案では、「~しなければならない」といった義務的表記も多く、非正規社員の処遇を正社員と同じ水準に引き上げるよう要求されているかのようにも読み取れますが、やみくもに賃金水準を上げる措置は人件費増となり、一方、正社員水準を非正規社員の水準に引き下げることは不利益変更となり好ましくありません。
現時点で企業に求められる対応は、これまでにおいて曖昧になりがちであった処遇の「違い」を整理し、合理的な理由に基づく区別の根拠を説明できるようにしておくことではないでしょうか。
加えて、今後は職務ごとに「期待する役割」や「課すべき責任」を改めて示すとともに、賃金や手当の支給基準の相違を明確にする人事制度の構築や見直しも必要になってくると考えております。
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