セミナーレポート
日本クレアス社会保険労務士法人主催「働き方改革セミナー」-(2)労働時間の上限規制

  • 2019年11月29日公開

【残業時間の上限規制】【有給休暇の義務付け】【同一労働同一賃金】働き方改革に伴うこれらの改正で、会社が求められている対応とは?日本クレアス社会保険労務士法人が主催した「働き方改革セミナー」では、実務上の問題点や裁判事例を挙げながら、実務の視点から「考え方」「今やっておくべき実務対応」について解説を行いました。第一部に引き続き、セミナーの内容をご紹介いたします。

セミナーレポートの第一部はこちらからご覧いただけます:働き方改革が必要とされた背景


労働時間の上限規制

労働基準法における労働時間の上限規制は、改正前後でどのように変わったのでしょうか。

法定労働時間を延長して労働させる場合には、労使協定(36協定)の締結・届出が必要となります。36協定において「延長できる時間(限度時間)」を定めることにより、その枠内における時間外労働が可能となるものです。さらに特別条項を結べば、限度時間を超える労働が年6回まで可能という仕組みになっています。

これまでは、延長できる限度時間は厚生労働大臣による「告示」で規定されており、特別条項においても上限の定めがなかったため時間外労働を蔓延させている原因にもなっていました。

そこで今回の改正では、「告示」から「法律」に格上げし、罰則による強制力を持たせました。限度時間の定め方についてもこれまでは1週間・2週間・4週間…と決めることができましたが改正後では、二つだけに絞られたことも大きな特徴です。

・1ヶ月45時間(一般労働者の場合。1年変形労働対象者は42時間)
・1年間360時間(一般労働者の場合。1年変形労働対象者は320時間)


■実務上の留意点「上限規制を超えない延長時間」とは
特別条項の上限には、4つの規制が定められました。

①年720時間(休日労働含まない)
②月45時間を超える時間外労働は年6ヶ月まで
③単月100時間未満(休日労働含む)
④複数月いずれも80時間以内(休日労働含む)

では、「上限規制を超えない延長時間」をどのように定めればよいのでしょうか。

例えば、1年あたりの上限を12ヶ月で割るという考え方(720時間÷12ヶ月=60時間/月)はいかがでしょうか。

この考え方ですと45時間を超える月数が12回となり、②「月45時間・年6回まで」の規制に抵触してしまいます。

では、(720時間を45時間×6回+✘×6回 つまり✘=75時間)ではいかがでしょうか?

年720時間の中には「休日労働時間」が加味されていません。であれば「75時間(休日労働含む)」とすればよいのでしょうか。

などという形で①~④に抵触しない運用上設定可能な延長時間についてセミナーではご参加いただいたみなさんと考え、最終的には日本クレアス社会保険労務士が推奨する考え方を提示しました。


■実務上の留意点「36協定の締結日」

今回の改正により、36協定の対象期間については「1年間」に限られることとなりました。よって、改正後は締結した36協定の1年サイクルが原則としてずっと続いていくことになります。

特別条項の発動できる回数は年6回です。例えば対象期間の前半に閑散期がある会社をイメージしてください。閑散期中に意識せず特別条項を発動してしまえば、後半の繁忙期に発動できなくなる?!事態も考えられます。

中小企業に対する時間外上限規制は2020年4月からスタートします。今の時点で自社の繁忙期を再度確認し、36協定のサイクルの見直しを検討するのも一案です。


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