国を挙げての取り組みである「働き方改革」。1947年の労働基準法制定以来、約70年ぶりとなる労働法制の大改正となりました。
日本の古き悪しき慣習であった長時間労働を是正するため、事実上、青天井であった残業時間の上限を規制するほか、年休取得の義務化や労働時間の把握義務、勤務間インターバル制度導入促進等、改正点は多岐に渡ります。
さらに、非正規労働者の不合理な待遇格差を禁じるために、「同一労働同一賃金」の実現を柱とした「働き方改革」が来年4月より順次スタートします。主な改正点と施行時期は下記のとおりです。
■施行時期:2019年4月
残業時間の上限規制 (大企業)
中小企業は1年後の2020年4月施行
特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働含む)を限度
年休取得の義務化
年休のうち5日分までの時季指定を企業に義務化
フレックスタイム制の拡大
フレックスタイム制の清算期間の上限を3ヵ月に延長
高度プロフェッショナル制度
年収1,075万円以上の一部専門職を労働時間規制から除外
勤務間インターバル制度
終業と始業の間に一定の休息時間を確保(努力義務)
労働時間の把握義務の明確化
管理監督者も含め客観的な方法による把握
産業医の機能強化
従業員の健康管理に必要な情報の提供を企業に義務付け
■施行時期:2020年4月
同一労働同一賃金 (大企業)
中小企業は1年後の2021年4月施行
正規と非正規の待遇に不合理な差をつけることを禁止
■施行時期:2023年4月
中小企業への割増賃金率の猶予措置廃止
企業規模にかかわらず、月60時間超の残業には50%の割増率を適用
改革に際し、「何から取り組むべきなのか?」「何から始めればよいのかわからない」といった声も聞こえてきます。企業が行うべき改革の第一歩は、現状の自社の状態(例えば、従業員の労働状況や各種休暇取得の実態把握等)を把握すること、そしてその運用が適切になされているか否かを確認することがスタートになります。
恒常的な長時間労働がある企業では、「残業時間の上限規制」の影響を受けるため、まず労働時間の管理体制を見直し、業務の効率化を図る等、残業を削減する施策を今から検討する必要があります。また、非正規労働者と正社員との賃金格差が大きい企業では「同一労働同一賃金」の実現にあたり、状況次第では賃金体系の見直しが必要になるかもしれません。
次号のアングルでは、正規と非正規の不合理な待遇格差をめぐり、最高裁まで争われた事件の判決内容を確認しながら、「同一労働同一賃金」を見ていきたいと思います。
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